【映画days #11】コスタリカの奇跡 ~積極的平和国家のつくり方~


多事争論

多事争論とは福沢諭吉が好んだ言葉として有名である。
「自由の気風は唯多事争論の間に在りて存するものと知る可し」
「単一の説を守れば、其の説の性質は仮令ひ純精善良なるも、之れに由て決して自由の気を生ず可からず」
自由とは、違う立場、違う意見を持つ者たちが議論をすることの中にある。単一の議論は、たとえすなおなよいものであっても、決して自由とは言えない。というほどの意味か。まことにあって然るべき態度であると考える。そして、逆を言えば、議論を沸騰させること、多種多様な意見交換を実現するものほど尊ぶべき。ということにもなる。

「コスタリカの奇跡」

コスタリカの奇跡 ~積極的平和国家のつくり方~」(2016)
という映画を観てきた。コスタリカは、チリやウルグアイと共にラテンアメリカで最も長い民主主義の伝統を持つ国で、中米では例外的といってよいほど、政治的に安定が続き、かつ経済状態も良好な「中米の楽園」と呼ばれるほどの国である。社会保障が充実し、識字率は高く、国民皆保険制度を導入しているなど、「楽園」の名にふさわしい存在といえる。
なぜ、「楽園」を実現することが出来たのか、それは常時軍を廃止することにより、予算を社会保障費に充当、

無料の教育、無料の医療を実現し、環境のために国家予算を振り分けてきた。その結果、地球の健全性や人々の幸福度、そして健康を図る指標「地球幸福度指数(HPI)」2016の世界ランキングにおいて140ヶ国中で世界一に輝いているのがコスタリカである。またラテンアメリカで最も安全とされている国でもある。

公式HPより

1949年、当時の大統領ホセ・フィゲーレス・フェレールによって軍隊廃止宣言がなされてから、1980年代にオスカル・アリアス・サンチェス元大統領による「非武装中立宣言」、そして現代にいたるまでの希望と栄光、そして苦難の軌跡を描いたドキュメンタリー映画である。

なぜ、ここに至ったか

と、このように書くとよいことづくめ、何もしらなければコスタリカは地上の楽園として刷り込みがなされそうだが、現実はそんな簡単なものではない。
コスタリカ内戦によって大統領に就任したホセ・フィゲーレス・フェレールが軍隊を廃止したのには、一に元大統領であるカルデロン・グアルディアの勢力の力を削ぐことであった。これはその後ラテンアメリカ諸国で多発した、軍事クーデターを防止することにもつながった。また、

これは、リオ条約と米州機構の存在によって成り立つものである。すなわち、米ソ冷戦期において米州における相互防衛を謳った米州相互援助条約(リオ条約)と、集団的自衛権を認めた集団安全保障機構である米州機構の存在が、コスタリカをして独自の戦力保持を否定させた要因である。

これは、ねたねこという方の「FUNGIEREN SIE MEHR !!」というブログからの引用である。

軍隊の役割は警察組織に委ねられ、有事の際は民兵団を組織できることが法制化されている。このとこは、作中で言及はされているものの、深くは掘り下げられていない。
1986年オスカル・アリアス・サンチェス大統領による「非武装中立宣言」にしても

当時隣国ニカラグアのサンディニスタ政権に対して反政府活動を行っていたCIA、コントラの後方基地(聖域)がコスタリカ領内にあったことに対する国内外の批判をかわす必要性から生じた、政治的なポーズ

という見方もできる。
すなわち、その場その時の状況を踏まえた、政治的な事情による選択であり、必ずしも理想を追い求めた結果、というばかりではないことは間違いない。そこにあるのはしたたかな行動力と、クールなリアリズムをもつ政治家たちの、「国を守り豊かにする」という野望である。

あらためて、多事争論

あらゆる人間は、善悪両面の性質を持つ。双方を持たねば生きていくことすらままならない。それが人間であり、多面体な、ほかに例のない複雑な生物なのである。その人間が構成してできた「歴史」を片側からのみしか見ないことほど、愚かな行為はないのだ。
いずれにせよ、
「だから軍隊廃止、非武装中立などあり得ない」という議論は間違いである。
反対に
「軍隊を廃してこその平和である」と言い切ってしまうのも間違っている。

「平和を抑止力とした」ということそのものが「コスタリカの奇跡」なのだ。
われわれが見るべきはそこである。この作品のHPに

「改憲をめぐって自衛隊の存在が論じられている今こそ、70年前に軍隊を解体したコスタリカの画期的な取り組みから学ぶべきことが大いにあります。日本の全国民にぜひ見て欲しい貴重なドキュメンタリーです。」

というピーター・バラカンの言葉があげられている。単純に受け取ってはならないが、深い言葉だと思う。
多事争論
まだまだ、議論を積み重ねていくのは、これからだ。

追伸として

先の「FUNGIEREN SIE MEHR !!」だが、少々偏りすぎだし、言い過ぎ(「ポーズ」なる表現)がなくもないが、きちんと根拠が示されていたりと、基本的にクールで面白い。よかったらご参照いただきたい。


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