【映画days #10】アギーレ/神の怒り


非アメリカなるものとの出会い

ウェルナー・ヘルツォークの作品が日本に紹介されたのは、80年代初めだったと思う。「アギーレ神の怒り(1972)」が岩波ホールで公開されたのが、その端緒だったのではないか。甚だいい加減な記憶で恐縮だが、大して意味もないので、調べようともしていない。
「戦後」も「高度経済成長」も終わり、何事もひと息つき、自分だけでなく、もうひと回り先を見渡す余裕ができてきた。そんな時代だったと思う。それまで、外国といえばアメリカ、ヨーロッパといってもイギリス・フランスのものくらいしかなかったのが、少しずつそれ以外のものが出回り始めた。そんな感じだったと思う。サッカー=イタリア=セリエAなる図式化を覚えたのも、この頃だった。

第三世界

第三世界なる言葉が流行したのも、この頃だった。当時はまだ冷戦時代だったので、東・西両陣営に属さない国々、当初はアジア・アフリカ・南米諸国を指す言葉だった。フランス革命期の第三身分になぞらえて、この名がついた、ともされている。
私の周囲で、もっともこの名が使われていたのが、映画界であった。主に、映画批評家の佐藤忠男先生(と言いたい)がインドや中国、韓国、北朝鮮の映画を盛んに紹介しており、キネマ旬報、映画芸術など、硬派系の映画雑誌でその名を見ない時はない。それほど流行していたものだ。そして、状況がこうずるに及びユーゴスラヴィアやグルジア、ギリシャなどヨーロッパ諸国ではあるものの、どちらかといえばマイナーな国(こちらかま知らなかっただけだが)も含めるようになった。

ヘルツォーク登場!

ヘルツォークもその流れで紹介されたものだったと思う。ドイツを第三世界扱いするのは、かなり無理があるとは思うが、「ニュージャーマンシネマ」と呼ばれた、それまでのドイツ映画になかった、新感覚派とも言うべき作品群は、とても新鮮に映ったのであろう。他にも、ライナー・ウェルナー・ファスヴィンダーヴィム・ヴェンダースフォルカー・シュレンドルフなど沢山の作品が集中的に紹介されていた。
当然、私の愛読誌「ぴあ」でも露出に次ぐ露出であった。だからよく知っている、という事情なのだが、当時はどうも手が出なかったのである。文芸映画は好きではあるが、どう考えてもおカッタるい作品群だし、高校生のお小遣いからして、優先順位を低くせざるを得ない、という事情もあった。いや、どうせ暇なんだからアルバイトせいや、当時のおれ。という感じなのだが、

クラウスとナスターシャ

前述した「アギーレ/神の怒り」も岩波神保町ビル入り口脇に、大きく掲げられたクラウス・キンスキーのおっかないツラにビビりつつ、ま、いずれ観ることが出来るだろぉと、スルーした次第である。クラウスはナスターシャ・キンスキーの父親で、ナスターシャ自身も出演している(ノンクレジットだが)と知ったのも、それから数年の後であった。
美しすぎる「テス(1979)」。内容は忘れ果ててしまったが、テス(ナスターシャ・キンスキー)がイチゴを咥えるシーンに、欲情(もしくは猥褻)ともいえる感情を持った身としては、観るべきリストの上位にアップされはしたが、そのまま35年を経過してしまったことは、まぁいつもの事だ。



かような事情があるゆえに
誕生!ヘルツォーク
なる回顧展が開催されると知ったからには、矢も盾もたまらず突撃!というのは当然のことであろう。

 

「アギーレ/神の怒り(1972)」



16世紀、ペルーに攻め入りインカ帝国を征服したフランシスコ・ピサロ。エル・ドラドを探し求め密林に分け入るが、進退極まり、先遣隊を派遣する。その副長がアギーレ(クラウス・キンスキー)である。
濁流に飲まれ多くの仲間を失い、上官と対立、反乱を起こす。先住民の襲来、隊員の粛清、疫病と次々と災禍が襲い来るが、アギーレのエル・ドラドへの深い執着心のため、全滅する。
アンデス山中を下る軍団をロングで捉えたファーストシーンだけで、どっぷりと作品世界へと引きずり込まれてしまう。
アマゾン川を下るアギーレたち。アマゾンを征服するはずが、反対に川に、異世界に取り込まれゆく姿を、手持ちカメラを多用し、ドキュメンタリーのようなタッチで描いていく。
タイトルになっている「神の怒り」。アギーレが口走る、印象的なセリフだ。聖書由来の言葉らしいが、よくわからない。ヨーロッパ人でもクリスチャンでもない者のつらいところだ。勉強しなければ。

それにしてもクラウス・キンスキーの凄まじいこと。爛々とする眼光を観るだけでも、十分に元を取った気になれる。



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