【映画days #12】小人の饗宴(1971)


ヴェルナー・ヘルツォークの長編第2作である。「アギーレ/神の怒り(1972)」でぶっ飛ばされた身としては、ぜひとも体験せねばならないだろう。

小人の饗宴

ドイツの片田舎にある、障害者施設での1日を描いた作品である。低身長症を患う彼らが、管理者のいない間に、日頃の鬱憤を晴らそうと暴れ回る、というストーリーである。
このように書くと、首尾一貫したお話にみえるが、じつのところはひたすら小人(差別語に非ず、そのように表現される)たちがものを壊し、火をつけ、動物を殺しまわる。盲目の小人姉妹をいじめたおし、納屋にある自動車を持ち出し、走り回らせたあげく、裏山にある大穴に突き落としてしまう。この間、語れるようなストーリーは一切ない。文字通り小人たちの饗宴を、何らの彩りもなくモノクロフィルムに映しとっただけのものだ。ぶっちゃけたところ、非常に困った作品であった。

この作品から、何らかのメッセージを読み取る事は可能であろう。製作の少し前に、ヒトラー、ナチスですべてを失った国である。アナーキズム、コミュニズム、資本主義、冷戦、あるいは世界的中で同時多発した学生運動など混沌とした社会状況を表現している。といってしまえば簡単な事だが、たぶん違う。でなければ、小人を使ういわれはない。あれほどまで執拗に醜悪な何かが汚らしい何かへと、変わりゆく様を映す必要もない。

要するに、ヘルツォークは小人(繰り返すが差別語として使ってはいない)たちを使い、妙にスケールアウトしたへんちくりんな馬鹿騒ぎをやりたかっただけなのだ。皮肉で意地悪で差別的で容赦のない感情〜それは誰しもが持ってはいるが、出そうとしない、いや出すに出せない感情を爆発させたのだ。そんなものに感情移入できるわけもないし、カタルシスを感ずる、というものもほとんどいないのではないか。

そんな映画をシレッと作れてしまうヴェルナー・ヘルツォークという作家にますます興味が湧いてきた。次回は「シュトロツェクの不思議な旅(1976)」とのことだ。とても楽しみだ。


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