須坂市「鮎川バーベキュウ」一見さんと”Less is more”


鮎川バーベキュウ
場所 長野県須坂市八町上八467 [地図はこちら]電話 026-245-6262
駐車場 あり

須坂の街は豊穣なり

と言ったのは、名のある文豪ではなく私であるのが恐縮でならない。とはいえ、さして広い範囲でないに関わらず、様々な史跡や文化財かひしめくように存在するのは、ひとえに旧中山道の集積地であったからではないか。人と人とが衝突する地、文化の交錯地には他とは違った文化が花開くのだ。それらを紹介するわけにはいかないが、強いて一点のみあげれば八丁鎧塚古墳。規模こそ小さいが、ロケーションといいシチュエーションといい、「勇壮な」という形容がぴったりな史跡はない。もう少し有名になってもよいと思うのだが。

鮎川バーベキュウ

その八丁鎧塚古墳にほど近い街道筋にこの店はある。ある意味、須坂の”豊穣”の到達点ともいえるこちらをご紹介できることを、心より幸せに思う。
かつて、木造建築物に頻繁に使われていた外壁用鉄板に覆われた建物は半世紀は経過しているのではないか。傍らには”鮎川バーベキュウセンター”と、大きくレタリングされている。幼少期、父に伴われていった青梅川の上流にあったなぁ。そんな感じである。

現在では見かけなくなった、薄いアルミの引き戸をカラリと開けると、内部はちょっとした広間となっている。大きな窓が南向きにいくつか設けられているためか、想像した以上に明るい空間である。たまたま居合わせたマダムが
「いらっしゃいませー、お一人ですか?」
?のニュアンスに不思議さを感じながら
「はいそーですよ。お一人様で初めてお邪魔したんですが」
と答えたら

「えええええええ!一見さんでお一人ですかァ?」

という極端なリアクションが返ってきた。どうやら近在の常連さんによく利用されている店のようだ。いやなに、美味いものがあれば一人でも二人でも、どこへでも参るのだ。それに海外に行くわけではない。
“一見さん”という響きがなんとなく気に入って、ウキウキとしながら個室に通される。四畳半の部屋は畳敷きで、北向きのためか少し寒気がする。隣では家族づれらしいグループがわいわい、楽しそうにしている。
メニューはお料理3品に飲み物、お食事5品とごくシンプルなものである。今回はベーシックコースとする。

「鉄板焼き(一人前)」540円 「ライス」170円

鉄板焼きといっても鶏肉のみである。これを備えつけのガスコンロで焼き、食べる。薄味がつけられているが、備えつけのタレを足した方がよいと思う。炊きたて熱々のごはんよし、自家製であろう野沢菜がまたよい。

足りない…
いや量が、という事ではない。サービスが足りない、室温が足りない、設備が足りない。しかし、これがよいのだ。

“Less is more”

といったのはドイツ人建築家 ミース・ファン・デル・ローエだ。

“少なきものこそ豊か”
というほどの意味だ。過剰な装飾を嫌った、モダニストらしい名言だ。これは現代にも十分通じる精神だと思う。
“足りない”からこそ”楽しい”。”足りない”からこそ”美味しい”。”足りない”からこそ”想像力”で補うのだ。
「便利なこと」は常に追求するべきであろう。われわれにとって、というより子どもやご年配の方、身体障害者の方たちのような社会的弱者のためにもより「便利」にしていくのは急務である。しかし「便利すぎる」ことは必要ではないのだ。それに現代は「便利にしなければならない」と過剰なほど、神経症的な状態にあるような気がしてならない。

最後はほっこりと

美味しい鉄板焼きを食べ終わり会計となる。先ほどのマダムは仕込みに一所懸命である。お母さまと思しき、年配の女性が対応してくれる。
「お初の方ですか?」
「はい、友人に聞いてお邪魔しましたがとても美味しかったです。」
「そりゃらよかったねぇ」
「今度は友人たちと大勢できますね」
「ありがとう、お待ちしてますね」
そんなやり取りが楽しくて。ほっこりした気分で店を後にした。

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