「突破口!(1973)」そして名画座の暗がりについて


昭和41年生まれの私は、ビデオ第一世代とされている。
生活の中にVTRが、浸透し始めた世代ということだ。まだ、ベータか?VHSか?などという懐かしい論争を覚えている世代でもある。つまり、逆を返せば映画ファンにとっては「名画座最後の世代」ということになるわけだ。学校終わったら飯田橋佳作座に行き、サボっては後楽園シネマに行き、テアトル新宿で『時計じかけのオレンジ』を観て、自由が丘の武蔵野推理劇場で『ブリキの太鼓』観て、キネカ大森で『天井桟敷の人々』を観て、新宿昭和館の桟敷席でジャッキー・チェンを観ようとしたら併映が『緋牡丹博徒』でビックリしたという経験のある、ある意味幸せな最後の世代であると自負している。



何故に映画ファンとなったか。
とは、わが両親とくに父親が大の映画好きかつ名画座好きであったからに他ならない。
そもそも、父も新宿地球座・日活名画座で青春時代を送った関係で
『同じ映画なら安くてたくさん観れた方がいいじゃないか』
という主義…別の言い方をすれば「ビンボー人根性丸出し」なのだが、そういう主義の父親だったので、上記の名画座の大半は彼に連れられていったのが最初である。
その父親がもっともお好みであったところは、新宿にあった〈新宿ローヤル〉という映画館だった。こちらは新宿丸井の裏手にあって、〈レストランいのやま〉というセコい食堂(本当である)地下にある、薄暗い、埃臭いうらぶれた小屋だった。



ここのウリはなんといってもB級アクション映画専門館というところである。父親はとにかく、なにも考えなくてよい。肩も腰も痛くならない映画を一杯やりながら観るのが好きだった。父はオールド(現在でもダルマというのか)の小瓶片手に、私は売店で買ってもらった〈都古こんぶ〉かじりながら観るB級どもの楽しかったこと。

男クサさNo.1!バート・レイノルズの『白熱』『ゲイター』、カーチェイスだけスゴかった『ビッグ・マグナム77』、珍しいチェコ映画の『刑事マルティン・ベック』、ヘンチクリンな顔のジーン・ワイルダーが楽しくない『突撃!ジェットバス!』、とてもよい作品なのにヒゲで全てを台無しにしたダスティン・ホフマンの『ストレート・タイム』、裸エプロンならぬ裸ポンチョで女ひとり荒野をさまよう『女ガンマン』なんて小学生を連れてよく観にいったなうちのオヤジは。
そんな中で、ほとんど唯一『こりゃA級やなァ』と思わされたのがこの映画である。

『突破口!』 1973年 アメリカ
監督:ドン・シーゲル
出演:ウォルター・マッソー、アンディ・ロビンソン

とある田舎の銀行に押し入った強盗ども。せいぜいが1〜2万ドル程度の稼ぎと思っていたが、いざ中を見るとなんと75万ドルもの金が。この金はマフィアの大物が、銀行の役員と結託して隠していた金。間違えて盗んでしまったがために、警察・マフィア双方から追われる身となり…。

ノン・ストップアクション。などという言葉はなかったが、最初から最後まで息もつかせぬアクションの連続。登場人物全員が動きっぱなしで、次から次へ目まぐるしく変転していくストーリー。キビキビした演出はいったい誰だったのか、と調べてみたらドン・シーゲルだった。やはり一流は違う。主役のウォルター・マッソーはいつものおとぼけ顔の奥底にしたたかな〈悪〉を感じさせる。じつに名演。ラストは現在観ても息をのむほどの迫力だと思う。



以来35年が経過した。
名画座どころかビデオなんてものも、いつの間にか眼前から消え失せた。
シネコンの登場以降、一般的に「映画を観る」ことは、むしろ増えたのかもしれない。まことに喜ばしい限りではあるが、それはあくまで「アミューズメント」の一環である。むろん、昔から「娯楽」であることに違いはないのだが、同じ暗がりでも、現在のとは面白みが違う。そんな気がしてならないのは歳をとってしまったからだろうか。

 


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