あらら?冒険記 【晩秋のアート編】②


国立博物館

さて、エドヴァルド・ムンクを堪能、「想い」を過剰なほど摂取し破裂しそうなアタマをぶら下げて行ったのは国立博物館である。
子どもの頃、父に伴われ幾度となく通った場所である。40年前は、説明板などほとんどなく、ショーケースに入れられた展示物には小さく
「◯◯遺跡出土、◯世紀頃(推定)」
などと記されているだけの、誠に素っ気ないというか無愛想な空間であったと思う。現在はまったく違うが。こちらで観せてもらうのが

「マルセル・デュシャンと日本美術」

マルセル・デュシャン(1887〜1968)はフランス生まれのアーティストで、20世紀美術に「決定的な影響」を与えたとされる人物である。のだが、果たして彼を「アーティスト」とカテゴライズしてよいものか?率直なところ、私はこの人はアーティストというより理論家、あるいはアジテーター、もっと突き詰めれば「変態=人たらし」だと思っている。

変態=人たらし

彼の活動のごく初期に何点かの絵画(キュビズムに影響された作品で、これがまたよい)を発表したが、1913年以降は実作をほとんど行なわず、「レディメイド」という大量生産、かつ市販されている工業製品を組み合わせ、あるいはそのまま提示する事で「アート」だと主張した。
…というのはよいが、こういう存在ってアーティストなの?何をもってして「アート」なのかは議論の分かれるところであろうが、
「アーティストが選択し、これが『アート』だと宣言」
したものがそれだ、というのはかなり乱暴なことではないか。しかし、みなになんとなく納得させてしまうところがアジテーター。でも脇で「泉」や「瓶乾燥機」を見ながら、あゝすげ〜とかなんとか言っているヤツらを横目にニヤニヤしていた。それがデュシャンの本当の姿だったのではないか。私はそのように怪しくもいかがわしい存在が、なんとなく好きなのだ。あゝ人はそれを「もの好き」という。

「自転車の車輪」「瓶乾燥機」

回顧展だけに、彼の代表作が多く展示されている。まずは「自転車の車輪」。近くのデパートで買ってきた自転車の車輪とイスを組み合わせただけの、なんという事のないもの。まだこちらは「加工」という行程があるから納得出来なくはないが、「瓶乾燥機」に至ってはそのまま提示されているだけだ。

「泉」

これ有名な作品(?)。男性用便器を横向きに置いて、サインをしただけのもの。R.MUTTと偽名なのかというと、デュシャンはこれを出品した展覧会の審査員だったのだとか。立場上、本名ではない方がよい、として偽名で出したのだが、物の見事に落選したそうだ。

「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」

幅1.7m×高2.7mに及ぶ2枚のガラス板で構成された作品。デュシャンが1915年から1923年までの8年にかけて制作したが、未完のまま放置されたもの。デュシャンはこれ以降、ほとんど製作を行っていない。ここにあるのは、1980年代に東京芸大のメンバーによって製作されたレプリカだが、フィラデルフィア美術館の現物は大きくひび割れている。1920年代、搬出入の事故により割れてしまったが、デュシャンの
「それもまたアートの一環」
のひとことでそのままにされている、真面目なのかふざけているのか判別し兼ねる作品だ。

「1.水の落下、2.照明用ガス、が与えられたとせよ」

「遺作」もしくは「滝とランプ」と通称される場合もある。実物ではなく「映像展示」である。何枚かの画像をドキュメンタリー風に編集して、製作の背景や、デュシャンの狙いを説明するという仕掛けだが、少々のこと残念。とはいえ、さすがに国立博物館では無理か。理由は「デュシャン 遺作」でググってみて下さい。

まとめ

ということでマルセル・デュシャン、どこまで本気なのかふざけているだけなのか、まったく判断がつかない。ただ、彼は人間として結構面白いヤツだったのでは、と思うのだ。なんのかんのと言われながら、「あいつのやる事だから」と許されてしまうような、気のいいやつ、可愛げのあるオトコ。彼のニヤニヤ顔のポートレイトを眺めながら、そんな事を考えていた。

国立博物館が終わったから次へ!
…という気力以前に歩きすぎのため持病である腰痛が悪化。単なる運動不足ともいうが。ロビーにソファがあったのでひと休み。あまりの心地よさについ30分ほど寝てしまう。国立博物館で昼寝するヤツはなかなかいるまい。さすがにイビキまではかいていなかったと思う。腰痛が少し回復したところで、傍らをみるとなかなかよさげな展示があったので一巡り。

常設展「日本の考古」

日本各地で出土された品々の展示である。旧石器時代から江戸時代くらいまでを、概要的に陳列されている。とはいえさすが国立博物館である。概要だけでもかなりな数となる。巨大な銅鐸、埴輪などが所狭しとならんでいる。鶏の埴輪など初めて観た。

一番はこれ。いい顔してるでしょう。

ということで国立博物館見学は終了。「日本考古学 」だけを見学に再来せねばならぬ。


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