「夏の嵐」あるいは駆け落ちについて②


高校二年の夏休み。
…東京の高校生は、試験休みとやらまで入れると2カ月近くもお休みになってしまう。進学校でもない、部活もしない、アルバイトするズクもないグータラ学生はヒマでヒマで仕方がない。二週間もゴロゴロしていると、いい加減飽きもくるので、似たようなヒマ人探して遊びの相談となる。
『A部ちゃん元気?ヒマだったら映画でも観にいかない?』
A部ちゃんとは入学時から、仲の良かった男の子である。ハスキーで、なかなかの声質の持ち主であるものの、根本的に音感とリズム感に恵まれない、いわば〈絶対音痴〉の気のいいおとこだ。温厚なやつなので、声を荒げることはないのだが、その日は少々趣が違った。
『ああああ。映画?それどころじゃないんだよぉ』
と、やや血相を変えた声である。
 
…とはいえ、長くなりそうなので、その日の晩は新宿駅西口思い出横丁にてミーティングとした。生中片手に(高校生だが時効) A部ちゃん語るにはS藤くんが姿を消しているとのこと。S藤くんとは、私、A部ちゃんと三人で仲の良かったオトコである。
 
 
大好きな白モツをかじり、レモンサワー傾けながらA部ちゃん語ってくれたのは
◯自宅から突然いなくなり、ここ10日ほど連絡がとれない
◯しばらく前から交際していた、他クラスのC美ちゃんも姿を消している
◯お金も大して持ってはおらず、遠くには行っていないであろう
◯ひとまず警察沙汰にはせず家族と教員で探し回っている
◯仲の良い友人たちにも聞き回っているが、ぼくだけは居住地域がまったく違うので、知らされていないのであろう
 
とのこと。ああああC美ちゃん。クラスは違うが、あのふくよかで、おっぱいの大きいS藤くん好みの女の子だった。超天然なところが、可愛くないこともないのだが、言葉の遅さ足りなさで誤解を受けがちな娘でもあった。そのためか、級友はおろかご両親ともウマくいっていない。とS藤くんから聞いてもいた。たぶん原因もそこいら辺だろう。つらい人生踏み出してしまったな。数杯目の中ジョッキをお代わりしながら考えたのを覚えている。アイツも夏の嵐に惑わされてしまったのか…。
 
ということで以降ようやく本題となる。


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