「眼下の敵」男どもの不敵なツラ構え②


『Uボート』という映画がある。
1981年西ドイツ製作、ウォルフガング・ペーターゼン監督の、最初から最後まで緊迫しっ放しの張りつめきった名作。公開当時、けっこうなヒットとなって、私も友人と観に行った。確かに有楽町まで行った。…筈なのだがただ、小指のつま先ほども覚えていないのは、どういったことか。記憶力は悪い方ではないと思うのだが(昔のこと限定)、なぜであろうか。
理由はともあれ、もう一度観たい、とビデオ屋を行きつ戻りつしていたら、潜水艦映画(というジャンルをたった今作った)の名作があるじゃないか。これはよい!ということで借りてきたのがこの作品である。

『眼下の敵』 1957年アメリカ・西ドイツ
監督:ディック・パウエル
出演:ロバート・ミッチャム、クルト・ユルゲンス

第二次世界大戦中の南大西洋。アメリカ軍の駆逐艦とドイツ軍のUボートが遭遇。双方とも、単独行動であったため一騎討ちの闘いが始まる。
じつはこの映画、子どもの頃何度か観たことがあった。正直、『地味な映画だなぁ』と思っていたのだが、いやはやとんでもない。これほどすごい映画だったとは。

駆逐艦艦長マレル(ロバート・ミッチャム)と潜水艦艦長シュトルベルク(クルト・ユルゲンス)は共に戦争に批判的(後者はナチス党員ですらない)であるが、プロとしての義務感からお互いを倒そうと知力を尽くして闘い続ける。相手の意図を見抜き、先手を打って追い詰めようとするマレル。圧倒的に不利な状況の中、起死回生の一撃を加えようとするシュトルベルク。そして最後の壮絶な…。

戦闘場面はあれど、抑えに抑えまくった演出。派手なシーンといえばラストくらいか。確かに子どもの目には地味に写ったであろう作品だったが、これほど〈プロの対決〉を描いた作品は他にないだろう。緊張に次ぐ緊張の連続で疲労増進は間違いない。『Uボート』もすごいが、こちらの方が数段上を行っているだろう。

そして、そこに輪をかけて凄みを発しているのが両雄のツラ構えである。ロバート・ミッチャムの気だるそうで眠たそうな、あの独特な眼は、なにをやらかすか、まったく予想のつかない光が発せられているようだ。クルト・ユルゲンスはどのような困難と対峙しようと、絶対に曲げることも折れることもない信念の人。同時に仲間の生命だけは守り切る、深い深い優しさと憂いのあるツラ構え。両者とも、複雑でクセの強い名優だ。特にクルト・ユルゲンス。抱いてもらうならこの人、という気に(そういう趣味はないが)させられた。ああ、やっぱり人間〈ツラ〉が大事やなァと、中年すぎても少しも味の出てこないツラの持ち主は思うのだった。






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