店名 北陸名物 金沢カレー 松本店
住所 長野県松本市平田東1丁目26−16
電話 不明
バリアフリー ◯
駐車場 あり
年に一度
律儀にやってくる不愉快なイベント、それが健康診断である。毎年受けるたびに思う。「これ、本当に必要か?」
いや、もちろん大切なのは分かっている
体のメンテナンスも必要だ。何より歳を重ねるごとに、身体は確実に老化の足音を立ててくる。油断すれば、血圧も血糖値もコレステロールも、するりと基準値を超えてくる。だが、それにしてもあの空腹地獄、過酷な前日指示、謎のバリウム回転地獄……。「拷問か?」
そして今年も
その日がやってきた。正直、逃げ出そうかと思った。市外へ逃亡してもいい。先方からの通知を「届いてない」と言い張ってもよかったかもしれない。しかし社会人としての義務感が、最後の一押しとなり、結局は逃げ切れずに検診へと向かう羽目に。
検診前日21時以降
食事はNG。加えて当日の朝は水さえ飲むなという。目覚めた瞬間から口の中はカラカラ、胃袋はキリキリと音を立てている
やっとの思いで到着した検診会場
待ち受けていたのは、身体測定で目の当たりにする現実だ。身長は縮んだような気がするし、体重は気のせいではないレベルで増えていた。ショックで膝が震える
続く血液検査では
ベテラン看護師さんに「ちょっとチクっとしますね」と言われ、ああ今年もか……と思ったその刹那、本気の“チクっ”が襲来。目をそらしても痛みは逃げてくれない。
視力、聴力はかろうじて合格圏
だが、やはり問題は内臓系。いざ胃のバリウム検査へ。あの白くて重たくてなぜか少し甘い飲み物。バリウム。飲んだ瞬間から胃がずしんと重くなる。さらにその上から発泡剤を投入される。ゲップは禁止。だが、自然の摂理はそう甘くはない。喉元でこみあげる炭酸ガスを「おえっ」とこらえつつ、体は右へ左へ、30度傾けられ、上下反転。「今自分はなんの修行を受けているのか?」と天井を見つめながら思考が遠のいていく
あらゆる検査を終え
会場を出たころには正午を回っていた。胃の中は空っぽ。むしろマイナスなのではないかと思えるほど空虚。体力も気力も失われ、腹の虫は限界を迎えていた。そんな時、思い出したのだ。かねてから気になっていた“あの店”の存在を
「北陸名物 金沢カレー 松本店」
今回初めての訪問だが、金沢カレー自体は大好物で、県内の他店にもよく足を運んでいる
そして今日の目的は
ある筋から「すげーメニュー」として紹介された伝説の一品
「ボンバーカレー」
厨房から漂う香ばしいカレーの香りに包まれながら待つこと数分。現れた皿に、思わず「おお……」と声が漏れた。鉄皿にどっしり盛られた450gのライス。その上には艶やかな金沢カレーがたっぷりとかけられ、隅には千切りキャベツが控えめに添えられている。
その山の頂きに、夢のようなラインナップが鎮座している
・ロースカツ
・チキンカツ
・エビフライ
・ゆで玉子
・ウインナー2本
この豪華な盛り合わせ
まるで「ゴー!ゴー!カレー」伝説の“メジャーカレー”を彷彿とさせるビジュアルだが、ここにはまた独自の工夫とこだわりが見て取れる。
ロースカツとチキンカツは
どちらも小ぶりながら揚げたてで香ばしく、ソースがどろりとかかっている。金沢カレー特有の“まったり濃厚”なルーと相性抜群だ。豚と鶏の違いが際立ち、味のリズムに変化が生まれる
エビフライは
サクッとした衣の中にプリプリの身が詰まり、文句なしの完成度。ウインナーはパリッと弾け、噛めばジューシーな肉汁が口の中に広がる。ゆで玉子は、どんなに贅沢な一皿であっても、必ず“落ち着き”を与えてくれる名脇役。味のバランスを整えるこの一品があるだけで、心が安らぐ
ひと口、またひと口と
空腹の胃袋に滑り込ませていく。体がエネルギーを取り戻す感覚を噛みしめながら、無言で黙々と食べ続けた。そして気がつけば――完食。カレー皿は見事に空となり、鉄皿の光が満足気に輝いていた。
結果? もういいよ、どうでも
食後の満足感に包まれながら、ふと思い出す。「あ、今日の検診結果って……?」
だが、もういいのだ。数字がどうであれ、この幸せを味わえたなら、それでいい。もちろん、生活習慣を整えることは大切だ。しかし、心の栄養を満たしてくれる“すげーメニュー”の存在もまた、人生には欠かせない
検診で削られた心と体を
カレーと揚げ物がそっと癒してくれた午後。これこそが健康診断の真の目的、…なのかもしれない。
追伸
来年も健康診断のあとは“すげーメニュー”で決まりだ。なんなら、検診のために生き延びているといっても過言ではない。そんな気持ちでまた一年、ほどほどに気をつけて、うまいものを食って生きていこうじゃないか
コメント