店名 定食や
場所 長野県長野市小柴見371-2
バリアフリー △ 入口に段差あり
電話 080-8216-3714
駐車場 あり
新しき出会いとはかくも甘美なるものか
基本的にマイナー趣味の私にとって、「新しい何か」ほど好ましいものはない。これまで知らなかったジャンル、よそ様が知る由もなかった知識、まったく行ったことのない地をふらふらする(旅好きではないから、あまり経験はないが)、などという体験ほどわくわくドキドキさせられることはない
そして
もっとも好むのは飲食店。新しく出来たチェーン店もよいが、やはり嬉しいのは個人の方が営まれているお店。ラーメン屋でも定食屋でもよいのだが、通りすがりの道端で、ひょいと視界に入った屋号が気になってたまらない。こんな事を数十年続けているので、ここが美味いかまずいか、だいたい判断できてしまう
聖地とは
人それぞれ、趣味・嗜好の先にあるものだろう。最近では名探偵コナンが訪れたとかなんとかで、長野県各地を巡って歩くのが流行りと聞いた。先日、長野県庁を訪れたら、やけに人がいると思ったら、新しいコナン作品でここが登場するのだとか。なるほど、私は興味はないのだが、娘が好きなので写真を撮っていこう
私にとっての聖地は
県庁からほど近いところにある。山王から伊勢宮へと抜ける、なんという名のついた道かは知らぬが、小柴見のある地点。そうだ、あの伝説の「秋山食堂」だ。残念ながら3月で閉店してしまったが、こちらこそ聖地といえる。わざわざ訪れて写真を撮影したりはしないが、前を通りかかるたびに、あのすんげー料理群に想いを馳せている
秋山食堂のごく近い場所に
食堂あるいは定食屋らしき店構えを見つけたのはいつのことであったか。数年前から、といった感じではあったのだが、車での通りすがりだし、腹へって秋山食堂でナニ喰らうか、とばかり考えているタイミングの事だから、あまり気にはしていなかった
ところが秋山食堂はなくなり
あるSNS(たぶんInstagram)にこの店らしき投稿と接したのだが、なにやら美味そうだ。おばんざい料理?Wikipediaには
「昔から京都の一般家庭で作られてきた惣菜の意味で使われる言葉」
なのだそうだ。なんて雅な事であろう。ぜひ一度いっえみたい、食べてみたいと思いつつ、なかなか行き当たらない
前を通りかかっても
オープンしている気配がない。このところ、長野市内をふらつく事がないしなぁ、とはいえ、なにゆえ開いていないのか。不思議に思っていたところ、先週金曜日、たまたま開いているのを見つけたので飛び込んだ。11時になったかならないか。ランチタイムには少し早いようだが、お願いしたら快く受け入れてくれた。ありがとうございます
「定食や」
紅の地に白く『定食や』と施されたロゴ。傍らに大根(朝鮮人参ってことはないよね?)が記されているところから、野菜を中心としたメニューのようだ。あとで調べてみたら2023年オープンで週に3日、水曜日、木曜日、金曜日のみ営業とのよし。道理で出会えないわけだ
メニューは
「おばんざい定食 5種盛」1000円
「おばんざい定食 3種盛」900円
の2点
[今日の副菜]が5種用意されていて、これをすべて食べるか、3種食べるかで価格が変わる。これと
[メインのおかず]2種からひとつ選択して注文完了となる。これは週替わりらしく、いろいろ楽しめるようだ。うーむ、これだけでまた来たい
本日の
というか、『今週のメニュー』は
[今日の副菜]
・新じゃがのペペロンチーノ風
・モロッコインゲンのカレーきんぴら
・コリンキーの浅漬け
・ピーマンの酢醤油和え
・蒸しナスのねぎソース
名前だけですべてが魅力的、すべてが美味そうにみえる。もちろん、欲張り大喰らいオヤジは5種盛りを注文するに決まっている
[選べるメインおかず]
①エスニック鶏つくね
②サワラのサワーグリル
肉と魚から選べというのか。この優柔不断オヤジにどうしろというのか!「迷ったら両方」といったのは井之頭五郎であったが、今はそうはいかないだろう。様々なる思考と逡巡と、大量の発汗のすえ①を選択。ほどなくしておばんざい5種が提供される。
木製の盆に
配された5個の小鉢。それぞれが色も形も違っているし、料理も違うからみているだけで楽しくなってくる。以下、メニュー表の通りにご紹介する
「新じゃがのペペロンチーノ風」
小さな新じゃが 、1/2と1/6にたち割られたものがひとつずつ。蒸したあとに塩胡椒、鷹の爪とガーリックでほんのり調味されている。それぞれがキツくないのがよろしい。
ガーリックといえば、ガツンと効いていそうだが、ここはあくまでも品よくほんのりふんわりと。ぷっつり皮身の歯ごたえもじつによ
「モロッコインゲンのカレーきんぴら」
きんぴら、というのはゴボウのそれだけではなく、野菜の炒めものを指す、…というのは広義な意味でなのだろう。
これは醤油と砂糖で甘辛く、ではなくカレー粉で味つけという趣向。これがまたよろしいのだ。辛すぎず甘すぎず、ほんのりふんわり。鮮度の高いモロッコインゲンの味わいを活かしている
「コリンキーの浅漬け」
目に青葉、山ほととぎす、初鰹。というのは5月の句だが、そんなことを思い出すほど鮮やかな黄色。
コリンキーは正直、味はどうということはないがコリコリ歯ごたえがよい、としか思っていなかったが、ああそうか、こういう使い方があったのか。キュウリと合わせているのも、色彩が映えてよいのだ。センスがよすぎる
「ピーマンの酢醤油和え」
色鮮やか、といえばこちらも負けてはいない。千切りされたピーマンと、エノキダケを混ぜただけの、なんてことのない品ではあるが、これがまた映えるのだ。
緑と白、いや薄いベージュといった方が適切であろう。前者同様、箸をつけるのがもったいなく感ずるほどだ。
「蒸しナスのねぎソース」
この世にナスほど美味いものはない。煮てよし焼いてよし揚げてよし。場合によっては生でもよし。ナス美味いものはない、ナスほど好きなものはない。
ぶっちゃけたところ、ナスと接するだけで常軌を逸してしまうほどだ。ああ美味い美味い美味い美味い美味い美味い美味いーーーッ!…のではあるが、あまりにも美味くて、具体的な味わいを失念した。あああ情けないが美味すぎた
という事で
副菜を挙げていくだけで、とんでもない分量となってしまった。私の筆力のなさ、という事もあるのだが、それ以上にたった5種のおばんざいの情報量の多さ、多彩さがわが身わが頭脳を狂わせている。左様に表現するのが適切であると確信する。そして、状況はいよいよメインに至るのだ
「エスニック鶏つくね」
角の丸い平皿にサニーレタス、その上に配された3個の鶏つくね。見た目はいつものつくね、ではあるが、その表面はなにやら緑のまだら模様。
なるほど、香草たっぷり入りなのがエスニック風なわけだ。ゴツゴツした肌合いのつくねは、ひき肉というよりも叩き肉といった方が適切。
歯ごたえがじつによろしい。醤油ベースのタレは甘さ控えめ、そのためか大葉その他の香りがぶわり!と口中に広がる。こりゃ素晴らしい
ここに
ご飯とスープが搭載される。ご飯は鬼無里産の「ひとめぼれ」を用いているという。炊き立てほわほわで感動。
スープはネギとワカメ。全体的にほんのりふんわりとした味つけ。抑制された味わいは素材を活かし切っている。これで1000円というのだから、贅沢すぎるとしか思えない
レジ後に
いただいた名刺をみると、「農家の」と冠されていたから、もしかするとマスターご自身が生産された野菜なのかもしれない。いずれにせよ、鮮度の高い素材をセンスよく仕立て、しかも美味い料理を提供してくださる、じつによきお店であった。近いうちにまたお邪魔したいと、強く考えている。
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