店名 木曽路 多摩センター店
場所 東京都多摩市関戸6-5-12
バリアフリー ◯ ※エレベーターあり
駐車場 あり
東京に行ってきた
名古屋日帰りから、一日おいての上京だから、それなりに堪える。まぁまぁ忙しい日程であるのは違いないが、もともと決まっていた事だから仕方がない。老体に鞭打って、というほど大げさな話ではないにせよ、やはり移動が続くのは簡単ではない。それでも今回は一泊の予定であったので、多少なりとも気持ちに余裕があり、ダメージは少なく済むだろう、そんな思いを抱きつつ、意気揚々と東京へ
用向きは
施設に入所している母のご機嫌伺い。顔を見せ、近況を伝え、短いながらも会話を交わす。といっても、ほぼ毎月顔を出しているため、特段新しい話題があるわけでもない。母に少しでも気分転換をしてもらうというところだ。昼食に連れ出し、外の空気を吸わせ、ガス抜きを図る。施設は、個室とはいえそれなりに気を使うこともあるだろう。だからこそ、たまには外でいろいろと吐き出させてやらねばならない
そうはいっても
ほぼ毎月のように通うとなれば、それなりの出費も重なってくる。ガソリン代も高速道路代も、馬鹿にならない。できることなら多少なりとも節約したい。今日はサイゼリヤでピザやパスタを心ゆくまで食べさせてやろうと考えていたのだが、あいにく土曜日のランチタイムで店は大行列。仕方なく、近くにあった「味の民芸」でうなぎでも食べさせようかと店先に車を停めたのだが、母はここが嫌だと泣き出しやがった。まるで小学生のようだ。「グズるんじゃない」と言いたくなるが、強引に入るわけにもいかず、再び車に乗せてしばらく走り、ようやく「ここならよい」と頷いてくれた店に辿り着いた
「木曽路 多摩センター店」
しゃぶしゃぶも扱う高級和食のファミリーレストランである。女性スタッフは着物姿、男性スタッフはきちんとネクタイ姿。どこか和風旅館を思わせる雰囲気を漂わせており、落ち着いた空間が広がっていた。店内は賑わっていたが、若い家族連れよりも年配層が多く、私より少し上の年代の夫婦や家族が中心。価格帯からすれば自然な光景である。メニューを広げ、「何を食べたい?」と母に選択させたのがこちら
「妻籠」2420円
思わず「高いなぁ」と心の中で呟いたが、それ以上の価格帯の料理もあるので仕方がない。母に楽しんでもらうことが最優先だ
食前酢
お造り
茄子田楽
牛肉ときのこの豆乳鍋
蒸物
揚物
御飯
汁物
香の物
そしてデザートという豪華な構成。まるで旅館の夕食のようである。さらに御飯を+800円で松茸ご飯に変更できるというので、迷わずそちらを選んだ。これで軽く3000円を超える。節約どころではない。しかし「母親孝行」と思えば、まぁ良しとするしかない。ああ、サイゼリヤ…!
それでも
料理の一つひとつは実に満足度が高い。食前酒ならぬ食前酢で軽く乾杯し、鮮度抜群のまぐろとハマチの刺身に舌鼓を打つ
揚げたての天ぷらは、エビ、カボチャ、オクラが軽やかにサクサクと仕上がっており、油っぽさを感じさせない。
特筆すべきは茄子田楽である。私はもともとなす好きではあるが、この世にこれほど美味いものがあるかと思わせるほど絶品であった。
さらに牛肉ときのこの豆乳鍋も、優しい味わいで、あっさりしつつも深みがある。写真を撮り忘れたのが悔やまれる
スタッフの応対も丁寧
調理も細やか。全体としてホスピタリティの高さを実感した。やはり安さ優先では得られないものがある。食後には「このお店を選んで正解だった」と心から思う。もう少し安ければなぁ
それにしても
母の食欲とお喋りの勢いには驚かされる。まだまだ元気なのではと思う一方で、認知症は確実に進行している。先々月に会ったときに一段階進んだ、と感じたが、今回はさらに二段階ほど進んだ印象を受けた。現在・過去・未来がごちゃ混ぜになり、八十年前の話と四十年前の話と今が入り乱れて出てくる。話を合わせるのも一苦労である。さらに、よそ様の悪口が始まると、場を収めるのが大変になる。正直なところ、外に連れ出すのも難しくなってきている
食事を終えて施設に戻ると
母は「帰りたくない」と駄々をこねる。なんとか宥めて送り届けると、スタッフの顔を見るや否や、先ほどまでの不満はどこへやら、笑顔で部屋に入っていく。こちらとしては
「居たくないんじゃなかったのか」
「また一人暮らしをしたいんじゃなかったのか」
と突っ込みたくもなるが、これも私に甘えての言葉なのだろうと理解することにする
スタッフに挨拶を済ませ
施設を後にする。いつもながら、どうしてやるのが一番良いのだろうかと、複雑な思いに囚われる。母のためにできることをしているつもりでも、本当にこれでよいのかという問いは消えない。それでも、こうして顔を合わせ、外に連れ出し、少しでも楽しんでもらえたのなら、それが答えの一つなのかもしれない。そう自分に言い聞かせながら、東京の空の下を走るのだ
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