店名 Ma-のかまど
場所 長野県上田市中央1丁目3−1
電話 0268-26-8570
ジャンル 洋食店
バリアフリー △ 入口に階段あり
駐車場 なし
食べたもの 「ゆとりの小コース ココット変更」2000円
10年ほど前になるであろうか
いろいろあって教育関係のお仕事をされている方々のお話を伺う機会があった。こうみえても数十年生きてきた身としてはは、ひと相手の事ゆえにまったく知らない知識でもなかったが、やはりプロフェッショナルは視点が違う。思わず身を乗り出してしまう瞬間があったりと、じつに豊かな時間を過ごさせていただいた。
中でも
興味深かったのは心理カウンセラーの先生からのお話だった。発達障害についての話題だったのだが、私より少し年嵩の女性カウンセラーが言うに、簡単に発達「障害」なる言葉を使うがこれはなんでも画一的に考えたがる厚生労働省の、もっといえば官僚主義がもたらした弊害でしかない。
他の人と
上手く合わせることが苦手なだけで障害者扱いされていたら、世の中は障害者だらけになってしまう。これは「障害」ではなく「気質」の一種としてカテゴライズされるべきだ。とのお話は大いに首肯させられるものであった。男の子を持つというお母さん先生曰く
「東大生の7割、そして男の子の10割は発達障害です」
要は
導き方なのだ。健常であろうが障害を持っていようが、すべての人間はなんとなく出来上がるものではなく、だれと出会うか、どこに導くか、いかなる導き方をされるかによって決定づけられるのだと。目からウロコが落ちるのではなく本当は目にウロコが飛び込むらしいが、そんな事はどうでもよい、そういう事であったか。「感動」を通り越し物理的な「衝撃」といってよいほどの揺さぶられ方をした瞬間であった。
以来
子どもたちのあり様を見る目がだいぶ変わったと思う。とくに男の子の方が。わが子は女、男と両方ともそろっているのだが、女の子の方はわりと小さなころから普通というか、常識的に接する事が出来るのだが、男の子の方はどうにも変わっているというか。男の私が言うのもおかしいけれど、アイツ絶対に変わっているよな。なんでお前はそんなところを歩くんだよ、え?アイツどこにいったの?あれあれあれ?なんで机の下にうずくまって本を読んでいるんだよ。
どうにも
予測がつかなくて面白いのだ。まぁ家内に言わせれば「面白い」と感ずるところそのものが男の感性という事になるし、実母から言わせれば私もまったく同じ特性を持っていたとの事だ。たしかに好むところ好み方が似ているし子どものころは十分変わっていた、…いや現在でも十二分に変わっているなぁオレ
上田の駅前は
ほとんど歩いた事がない。上田市に用事はあっても駅にはまったくないし、駐車場もないとくればほぼ立ち寄る機会が少なくなるわけだ。今回知人に連れられて数年ぶりに歩いた(ほんの少しだけ)のだが、以前に比べ閉じたシャッターが増えたようにも見える。
「Ma-のかまど」
中央一丁目交差点の北東角にある建物の2階にある飲食店。カフェでもない、レストランというか私は「かくれ家」という呼称がしっくり来る。靴を脱いで上がる室内のインテリアは木と朱の色を用いてはいるが派手さはなくシックな感じ。そのかわりアール・ヌーヴォーを主とした調度品がビシッと空間を引き締めている。壁にかかっているのはミュシャのポスター。ペンタッチがくっきり見えたので一瞬本物かと思ったがさすがに複製であろう。
メニューは
パスタ、ココット、カレーなどおしゃれな洋食屋風に美味そうなものが並んでいるが、ここは張り込んで総合的なものとしてみよう。
「ゆとりの小コース ココット変更」2000円
前菜、スープ、メイン、ドルチェという正式なプリフィクスメニューとなる。おおお総合的に楽しめそうだ。
「前菜」
3種のお惣菜といった感じ。以下、名称は私が適当につけたものだから気にしないでいただきたい。
・スモークサーモンと白身魚のマリネ
2種の魚と根菜類のマリネ、いや漬け物に近いか。あっさりした酸味だから浅漬けといってよいかもしれない。もっと酸っぱい方を好むが前菜だからこれくらいがちょうどよいかも
・ゴボウと牛肉の甘辛煮
具体的調味あるいは調理法は不明だが、これは間違いなく醤油と酒を加えた完全和風惣菜だ。名前もこれで合っていると思う。パンよりも白飯を下さい!という感じ
・ジャガイモのキッシュ
これはまたなんの衒いのない「フランスの家庭料理」という風情のひと品。ほわりとした玉子とジャガイモのくりくりっとした歯ごたえがまたよろしい。
「ココット」
カップスープの上にパン生地を乗せオーブンで焼き上げたもの。スープはパンプキンかチキン&トマトからの選択で前者を。かぼちゃというくらいなので甘いのかと思いきや、ほんのり甘味という風。塩辛いわけではないが出汁の効いた「オトコの子っぽいハード」という感じの味わい。
「メインディッシュ エビペーストサンドのローストチキン」
チキンの間にエビペーストを乗せたトーストを挟み込んだもの。すべてが昔からよく知った間柄なのに、こういうつきあい方があったのかと改めて気づかせてくれる。そんな感じのひと品。いやぁこれは美味い。
「ドルチェ アップルパイ」
ほんのり温かいパイは生クリームとコンデンスミルクと生のイチゴに取り囲まれ、とても幸せな余生を過ごしている。そんな感じのデザート。抑制された甘さがとてもよろしい。
煌びやかではあるが
落ち着いたてもいるインテリアは、センスのよいご家庭の片隅にいるよう。だから余計とかくれ家っぽく感じるのか。登場する料理たちは洋風ではあるがまったく気取りのないものばかり。フランスの田舎家にいる年老いたソフィア・ローレンが無言で作った、という感じの料理。んではこちらはマルチェロ・マストロヤンニのような顔をしていただかねばならぬ。といっても誰にも分からないだろうなぁ。
そうだ
そうなのだ。私も息子も、いや男の子は全員「かくれ家」が好きなのだ。だからいまだにトムソーヤーは読み継がれているし、私も息子も部屋の端の方で小さく丸まりながら読書をするのを好むのだ。
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