栄村「森宮野原駅」長野県最北端ランチ

和食

店名 森宮野原駅(JR東日本 飯山線)
場所 長野県下水内郡栄村北信3585-2
電話 0269-87-3311
ジャンル JR東日本 飯山線
バリアフリー ◯
駐車場 あり
食べたもの 「キノコうどん」600円、「本日のおそうざい」100円

 

私には「田舎」がない

といってしまうと非常に語弊もあるし、大きな誤解を招き兼ねない。いやそもそもお前は「大いなる田舎」である長野県に住んでいるのだし、自らも「日本一の田舎者」と自負しているではないか。ということではなく、この場合の「田舎」は都会の反対、山谷に囲まれた未開の地という意味ではなく、「郷里」とか「両親の出身地」というほどの意味である。

あいにくなことに

両親あるいは私もともに東京都出身なので「郷里」といえばわが首都 新宿区のど真ん中ではあるのであまり面白味はない。母方の祖母は秋田で祖父は台湾だから「田舎」っぽい存在もなくはないのだが、秋田には遠縁がいる程度であまり縁がないし、台湾には行ったことすらない。父方の祖父母は千葉県出身だし父の妹 叔母が嫁いでいるのでその家が「田舎」的な存在で子どものころはしょっちゅう遊びに行っていたが、厳密な意味での「田舎」ではないのでスッキリしない。

別にそんなものは

なくともよいのだが、なんとなく憧れるのだ。父親あるいは母親の実家にいる祖父母という存在に。久しぶりにお邪魔すると、祖父からはおおよく来たなとさんざん歓待され猫可愛がりされ、祖母は祖母でちゃちゃっと美味い手料理を作ってくれてと、ちやほやされる図があったらいいなとずーっと思っていた。だって私には物心ついたときには母方の祖母しかいなかったし、その祖母ですら小5のの時に亡くなっているし、記憶だってごく薄いものでしかないのだから。

ああそうかそうだったのか

私には実質的におじいちゃんおばあちゃんがいなかったから、その象徴である「田舎」を求めていたのか。こうやって書き起こしてみるとよく理解できた。…というかここまでしなければ分からないのか、という天の声は積極的に無視して今日も今日とて「田舎」に向かうのだ。

 

栄村

は長野県最北部にある地、というくらいしか知識がない。亡くなった義父は営林署勤めで最後は飯山管区だったから栄村のこともよく知っていて、「あそこの雪は凄い」と言い聞かされていた。とはいえ、もともと雪のない地域に生まれ育ち、現在でも1メートル未満の積雪しか経験のない身としてはどれほど「凄い」のか理解の外にある。

 

このほど

その栄村に面白そうなものができたと聞き及び、休みだし中野に用事があるのをよい事に、ちょっと遠出してみようとわが家を出た。長野から栄村までの道中の景色はあまり変わらない。1月半ばの雪が溶け残っているのと、その後のパラパラ降雪のため山谷+雪という風景が続くだけだが、その雪の高さ・厚みが増していくのはなかなか迫力がある。

私の好きな

北信五岳道路を過ぎ、中野を越え飯山まで来るとけっこうドライブした感があるが、目的地はその先にある。私の前にも後ろにも車両はない。もちろん沿道にも住まいがあるわけでもないので、少々寒いが窓を開け放ちカーステをガンガン鳴らしていく。MOON RIDERS、PANTAそして最近手にいれたTodd Rundgren「Arena」を聴きながらおよそ1時間半でたどり着いたのが最果ての地 栄村。

 

「森宮野原駅」


JR飯山線 長野県最後の駅ではあるが、ここを「最果て」といえばその地に住まう方々に失礼だ。しかしもやしもんの私からすれば長野県最北部の地は違ってみえた。そもそも雪の量が違う。長野市はだいぶ落ち着いてきたが、こちらは最高で 2メートルは積もったのではないか。傍らでは数人の男性が建物の屋根に登り雪下ろしをしている。通りかかった年配の男性からは
「こんな雪少ない方だよ」
と指さされた先には雪に半ば埋もれた
「日本最高積雪地点 積雪七.八五M 昭和二十年二月十二日」
の標識があった。うひゃーー。

そして今回の目的地は

森宮野原駅構内(というか待合室あるいはそこを利用したスペース)に毎週月曜日、木曜日、金曜日の3日間開店される飲食店。名前の記載はないから「森宮野原駅」でよいだろう。店先にあるメニューを覗くと

釜玉うどん(温)500円
釜玉うどんハーフ(温)300円
新メニュー さかえむらトマジューカレーうどん700円

そして本日限定であるところの

 

「きのこうどん」500円


どこの誰もが『限定』『特別』の文字に弱いものだ。ましてやミーハー軽薄代表の私など惹かれないわけがないからもちろんこちらをオーダー。店のおばちゃんの
「はい!お待ちどうさま!」
という元気な声とともに登場したのは紅黒のプラスチック碗に盛られたうどん。ナメタケ、エノキダケ、マイタケなどきのこ類がどっさり入った茶色のとろとろうどんは、とても暖かで滋味深く美味いものだ。そしてお楽しみはこれだけではない。

 

「本日のおそうざい」100円


うどんを注文したもののみに与えられるお惣菜バイキング。3種の揚げものと1種の煮物、そして漬物一品という可愛らしいものだが、このおかず類がたまらなくよろしいのだ。

 

・揚げ餃子

鶏肉、チーズ、大葉といったごくシンプルな具材がとてつもなくプリティ。およそ「イキり」「衒い」というものが感じられない、好感しかもてない料理である。とはいえもっとも自然体なものが

 

・ソーセージフライ


ソーセージといっても、アルトバイエルンとかシャウエッセンとか粗挽き高級品ではなく昔ながらのソーセージ。半分に切られたソーセージに薄い衣をつけて揚げられている。ぷりぷり歯ごたえが心地よい。どうせなら赤いのでやってもらいたかった。

 

・かぼちゃコロッケ


ゆでたかぼちゃをマッシュして丸く成形して揚げただけのシンプルコロッケ。ほくほくネットリ甘い、とても昭和のかほりのするコロッケ。おそらくこれが一番手間がかかっているのだろうなぁ。

 

・大根の煮物


大根を葉っぱごと鶏肉で煮つけたもの。味がしみしみで柔らかくて美味いのだよこれが。おばちゃんが最後だからどんどん食べろと言ってくれたので 2回もおかわりしてしまった。

 

・漬物


普通の大根と紫大根、にんじんを塩でさっと浅漬けにしたもの。塩気がちょうど良い。パリパリしていてとても幸せな漬かり具合。

 

はっきり言ってしまえば

「田舎料理」というしかない。どこにでもある材料、というよりも自宅の冷蔵庫に残っていたものを使いちゃっちゃと作ったもの。といってしまえば埒もないのだが、これがよいのだ。いやこれでなくてはならないのだ。先に書いた「田舎のおばあちゃん」が作ってくれるのはこういう料理なのであろう。私はこれを求めていたのだ。そうだ、そうなのだ!私はこれを食べたかったのだ。ああああ美味いよぉ。

 

食後

店のおばちゃんに訊ねたところ、昨年7月にオープンしたのだとか。詳しい経緯まではきかなかったが、近所のおばちゃんたちが「何か」を求めて始めたのであろう。長野市からここでランチを取るために来た。といったら大層喜んでくれた。あるSNSで知ったといったらものすごく驚いていた。ブログ、YouTubeにあげていいかい?と訊ねたら快諾もしてくれたのでたった今ブログにアップロードした次第。おばちゃんたち、また時間みつけてお邪魔するからね。

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