店名 トラック満足食堂(下り)
場所 長野県佐久市下平尾2329 佐久平SA下り
バリアフリー ◯
駐車場 あり
ガストでの朝食を終え
まだ余韻が残るなかで次の目的地に向かう。世田谷文学館。世田谷区が設立した施設で、作家や評論家、文学者たちを顕彰し、展示やイベントを行っている。きちんとチェックしているわけではないのだが、時折驚くような企画を打ち出すので、気を抜けない。過去には、小松左京や筒井康隆、さらには江口寿史、伊藤潤二といった、どちらかといえばマニアックで濃度の高い作家や漫画家を扱っており、公営の施設でここまで攻めるのかと感心させられたものだ。なかなか侮れない。今回のイベントは
「海野十三と日本SF」
海野十三は昭和初期から戦後にかけて活動した作家。逓信省の技師として働きつつ、ミステリーやSFといった作品をものした。「日本SFの父」と呼ばれるほどの存在で、日本初のハードSF作家ともいえる
正直なところ
海野十三についてはほぼ知らない。子どものころ「火星兵団」を手にした記憶はあるが、語り口や描写が古臭くて、子どもにはついていけなかった印象が残っている。それでも、小松左京や筒井康隆、豊田有恒、手塚治虫といった日本SF第一世代の作家たちが彼の影響を強く受けていることを知ると、無視できない存在であることは明らかだ
展示を通し、初めて彼の生涯にふれる
52年の短い生涯は、科学と文学のはざまを必死に生き抜いた姿が浮かび上がってきた。エリート官僚として安定した職にありながら作家として人気を博し、一時代を築く。しかし戦争の時代に突入し、戦意高揚のプロパガンダに加担してしまったことを深く悔い、ついには一家心中を図ろうとするまでに追い詰められた。自ら命を絶つことはなかったが、結核により昭和24年、52歳でその生涯を閉じた。科学を通じて人を幸福に導こうとした作家が、皮肉にも戦争に利用される形になったことは、彼にとってどれほどの苦悩であったか
展示では
親友 横溝正史との交友も描かれる。互いの近況や病状を語り合い、励まし合う姿は温かみと同時に、時代の厳しさを映している。印象的だったのは、戦後困窮した横溝を、海野が持ち金をはたいて呼び寄せたというエピソードだ。翌年に海野は亡くなってしまう。墓石すら用意されず、横溝が
「私に用立てる金はあっても、自分の石碑にまで手が回らなかったのだろう」
との言葉に胸を締めつけられるものがあった
展示の一角には
映画「東京要塞」のスチール写真のコーナーもあった。1938年、昭和13年に海野が原作を書き、ほぼ同時期に日活で映画化された作品だ。東京のど真ん中に某敵国が巨大要塞を築き上げていたというストーリー。アタマの悪いネット右翼が喜びそうな筋立てが微笑ましい。しかしハットとスーツ姿のモダンボーイたちの立ち居振る舞いが実に格好よく、ぜひ観たいと思わされた。しかし残念ながらフィルムは現存しておらず、想像の中で楽しむしかない
文学館を後に
せっかく世田谷に来たのだからと桜新町の「長谷川町子美術館」に立ち寄ろうと向かう。環八を30分ほど走り、到着したものの、駐車場が見つからない。コインパーキングはいくつもあるがどこも満車。一方通行にうっかり逆走してしまい、対向車のドライバーに注意されるという失態もあり断念する
時は11時半
このまま帰路に就く。ただ真っすぐ帰るのではつまらない。群馬県甘楽町にあるこんにゃくパークタダ飯喰らおうと画策。首都高、東北道、そして関越道へと乗り継ぎ、富岡に到着したのは14時半頃。こんにゃくパークは観光バスも押し寄せる人気スポットであることは承知していたが、1人ならなんとかなると思っていたが、やはり甘かった。
「ただいま2時間待ちでーす!」
というスタッフさんの言葉を聞いた瞬間に心が折れた。仕方なく再び高速に乗り、帰路を急ぐ
問題は空腹だ
朝食をがっつり食べたとはいえ、すでに15時を過ぎ、腹の虫が騒ぎ出している。このまま帰宅して夕食を待つなど到底不可能だ。幸い、長野へ向かう高速の途中によき店がある
「トラック満足食堂」
佐久平サービスエリア下りにある、トラックドライバー御用達の食堂。量が多く豪快な料理が売り。テレビやYouTubeでもよく紹介される人気スポット
「麻婆牛筋煮定食」1250円
見るからに食べ応えのある一品。大ぶりの牛筋肉がとろとろに煮込まれてごろごろ入っており、豆腐も賽の目サイズでたっぷり。麻婆というから辛さを覚悟していたが、それほど辛くはなく、むしろ旨味が前面に出ている。紅生姜を添えて口に運ぶと、爽やかな酸味が加わって味わいが広がる。横に添えられた千切りキャベツも良い箸休めとなり、最後まで飽きずに食べ切ることができた
腹が満たされ
ようやく心も落ち着く。長野まではあと少し。事故なく無事に帰ろう。ガストでの朝食から始まり、文学館での発見、想定外のドタバタ、そして豪快なサービスエリア飯で締めくくられた一日は、振り返れば実に盛りだくさんであった。小さな失敗も、思わぬ寄り道も、すべてが旅のスパイスとなり、記憶に深く刻まれていく
コメント