店名 栄食堂
場所 富山県下新川郡朝日町境647-1 [地図はこちら]
電話 0765-83-3355
ジャンル 食堂
バリアフリー ◯
駐車場 あり
海岸線を持たない地域を
行政区分別でいえば海なし県または内陸県ともいうそうだ。日本では栃木県、群馬県、埼玉県、山梨県、岐阜県、滋賀県、奈良県そして長野県の8県となる。なかでもわれらが長野県はもっとも山深い地といえるではないか。なにしろ『日本の中でもっとも海から遠い地点』などという場所があるくらいだから。
そんな身の上だから
『海鮮』ときけばピピピピっと反応してしまうのは致し方のない事だ。条件反射、ほぼほぼパブロフの犬といった状態、という事も何度も何度も何度も何度もしゃべり倒しているのでみな知っていることだと思うのだが、やはり言わずにいられない。
さぁ海鮮仕入れにいくぜ
という事で富山県にいる。
仕事ではないが遊びでもない、という理解しがたい状態での訪問だ。県外移動の自粛を叫ばれているが、マスク必着の上静かに静かに。人ごみを避けての行動とする。
朝早起きして、というのはいつもの事だから大した努力ではない。彼の地までのルートは2点。白馬廻りか上越廻りかになるが今回は上越方面、海を愛でながら行く。直江津に用事があるという事情もあるが。
途中いろいろあったが用事を済ませ昼食となる。日本海沿いをそのまま南下していく。じつは以前から気になっていたものがあるのだ。それをぜひ確認したいと思いひた走る。この国道8号線は別名『たら汁街道』と呼ばれており、上越から富山にかけてこの看板があちらこちらに散見される。いったいこれはなんだ?と思いながら幾星霜、本日ようやく体験のはこびとなった。
だからといってどこで食べるのがベストなのか。近在の知人でもいれば確認のしようもあるのだが、生憎なことに左様な便利な存在があるわけもない。したがってネットで入念に調べ、もっとも書き込みの多かったこちらに決定した。
「栄食堂」
こちらの富山県での位置づけは今ひとつわからない。ここまでのたら汁街道の道中でもっとも混雑した店舗であったところから、よほどの人気店なのではないか。入店するなりおばちゃんから定食や丼もの以外を注文するなら基本セット、ご飯のサイズ大中小と汁物とん汁、みそ汁、たら汁の別を選択せよと言われ、もちろんたら汁とご飯は小サイズとする。
たら汁が
出来るまで少し間があるそうなので、傍らのショーケースから美味そうなサイドメニューをチョイスする。
惣菜類、サラダ、塩辛、刺身、魚の煮物などがたくさん用意されているのだが、どれにしたらよいのか。優柔不断の者にとっては辛いシステムではあるが、その半面パラダイスでもある。
「お造り」600円
ファーストチョイスは刺身だ。シンプルなマグロの赤身とイカ刺しだ。どこにでもある刺身にしかみえないが、それは海なし県民の錯誤というものだ。こんな高鮮度で旨味たっぷりの刺身がどこにあるというのか。少なくとも長野県にはない。あってもこの価格ではあり得ない。
「真鱈の煮つけ」400円
真鱈のぶつ切りを玉子ごと煮つけたもの。昔、母親が醤油と酒とミリンでパパパっと作っていたような一品だ。これもどこにでもありそうだが、このほどのよさ、甘すぎず辛すぎずほんのりとした美味さはここにしかないものと断じて構わないだろう。
「たら汁」800円
まずはそのフォルムに驚かされてしまう。なにしろ一人前が蓋つきアルマイトの鍋ごとドンと供されるのだから。豪快ではあるがだからといって、決して大雑把には出来ていない。
ネギとゴボウを少し入れたみそ汁に、鱈のぶつ切りを放り込んだだけのものに過ぎないのだが、出汁の取り方、たらの処理が絶妙。鱈からはさほどの旨味がでるとは思えないので、やはり全体的な扱い方、処理法が上手いのであろう。
あまりの美味さに夢中で平らげてしまったが、鍋ひとつ飲み干してもまだいけそうなほどだ。
餅は餅屋、海のものは海辺のものに扱わせるべし。これは誠に真なることだ。たら汁は美味すぎた。これは常習性がある極めて危険な食べ物だ。またすぐにでも食べに来たい。
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