店名 岐阜屋
場所 長野県北佐久郡御代田町御代田2770-1
電話 0267-32-4129
ジャンル 食堂
バリアフリー △
駐車場 あり
世のオトコどもの大半は
マザーコンプレックスがデフォルトなのだという。特に味つけに関しては、母親のそれから逃れられず、配偶者とのトラブルが絶えない、などという家庭がそこかしこにあるのだそうだ。
面白いことに、わたしにはまったくその気がない。その場その時の味わいをしっかり受け止めるのをテーマとしているためか?ぶっちゃけたところ、母親と同居していた時にナニ食べさせられていたのか、まるっきり忘れてしまってもいる。
「薄情もの」
と、いつぞや母親に詰られたことがある。
「鮭は甘塩以外みとめない」
と母に言ったら、うちはおばあちゃんの代から塩鮭が好きでお前たちにも塩辛いのしか食べさせたことがない。兄二人も塩鮭が好きだ!お前はなんて薄情なんだ。
……母と別居して25年が経過した。あなたの味から離れて25年。そんなもの忘れてしまったわい。まったくアホな母親である。
そんな薄情なわたしあるが、唯一忘れられない「母の味」がある。嗚呼、それはチキンライス。
わが家の土曜半ドン昼めしはニラ玉かチキンライスと決まっていた。家業が忙しく簡単に用意出来るもの、ということだったのだが、大好きなチキンライスに文句を言うはずがない。
大量の冷やご飯に大量の鶏肉(プレスハムということもあった)を投入し、大量のケチャップでべたべたに味をつける。咽頭部がいがらっぽくなるほどの酸味を楽しむのがわが家流であった。
家食だけではなく、外食でもチキンライスは人気者だったはずだが、いつの間にか見かけなくなった。近年に至りオムライス、ナポリタンスパゲティは復活したが、チキンライスは未だお隠れになったままなのが口惜しくてタマらない。
あーー!お母さんのチキンライス喰いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
御代田町に「岐阜屋」という食堂がある。
煤だらけのフォルム、油がじっとり染みついたインテリアは、この空間だけうっかり昭和の時代からタイムスリップして来たのではないか?と、本気で思わされるようなシブいお店である。
先だって、人を介してこちらの「揚げ焼きそば」の存在を知り頂いて来た。その時の写真をチェックしていたらメニューになんと!チキンライスがあるではないか!これは行くしかない。ちょうど佐久への用事もある。いざ、チキンライスを貪りにゆくべし。
母より少し年若であろうか、シワだらけのばーさ、いやおばさんの作ってくれたチキンライスはまさにイメージ通りの品であった。
大量に投入されたぷりっぷりの鶏肉、同じく大量の玉ねぎはどこまでも甘くシャキシャキ歯ごたえが小気味よい。何より嬉しいのは乱切りされたナルトである。いかにも「嵩増し部隊」然とした存在は、まさに「お母さんのチキンライス」を象徴したものといえよう。実母のそれにもナルトはもちろん、さつま揚げやらハンペンやらたくさん入っていたものだ。
レンゲでひとすくい。
ケチャップのべたべた感が素晴らしい。今様のあっさりなど味つけではない。ケチャップは大量だから価値があるのだ、と言わんばかりの投入量である。重いのだ、咽頭部がいがらっぽくなるほど酸味が強いのだ。うまい、うますぎる。
久しぶりに母親のチキンライスが食べてみたい
と、心から思うのだがいかんせんこんな状況ではチキンライスどころか顔を観にいくのもままならない。かくなる上は、コロナが終息するまで母親に元気でいてもらわねばならない。
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