店名 蔵カフェ 菜々
場所 石川県鳳珠郡穴水町川島ツ126 [地図はこちら]
電話 0768-52-0855
ジャンル カフェ
バリアフリー ◯
駐車場 あり
世の中で
私ほどのエゴイストはいないと思っている。いい加減で無責任で、そのうえなおかつわがままで。ときてしまえば生きている価値はあるのかなオレ。そんな私でも最低限の責任はある。少なくとも私が考えた以上、言った以上、手にした以上は確実にやり遂げる。これは至上のことと言えよう。
このようにしませんか
と提案した私を信用してお任せいただいたのだから、何がなんでも実現するのは当たり前だ。私の意思で生んだ子ども(出産はしていないが)を社会に送り出すまで教え育むのも当たり前のこと。私に託された数々のヒト・モノ・コトに責任をもつのも当たり前のことだ。それらを活かすか見届けるか、あり方は様々だが、ふれた以上は最後まで、が人としてあって然るべき姿であろう。
北陸は
これまで数度訪れたことがある。上越から日本海に沿って進めばすぐだよ、とはいうもののそれは富山県、滑川くらいまでだから能登、それも奧能登といえばほぼ未体験ゾーン。ああそういえば数年前にのとじま水族館でジンベイザメみたなぁ、という程度だから初めてみたいなものだ。今回はちょっとしたご縁でお邪魔する事となったのだが、新鮮な風景が面白い。いわゆるリアス式海岸といってよいのだろうか。海と山が連続して登場する複雑な地形が、山国の民にとっては物珍しく、心沸き立つものがある。
七尾湾、能登島の北側対岸に位置する穴水町、そこにある穴水港に面する「穴水港湾 あすなろ広場」という広場がある。穴水町のイベントスポットとして運営されており、「まいもんまつり」という四季折々の美味いものをフィーチュアして開催されるイベントが有名との事だ。春はシロウオをフィーチュアした「いざさまつり」、夏は「さざえまつり」、秋は「牛まつり」そして冬の「かき祭り」など何がなんでも来てみたい。
「蔵カフェ 菜々」
その一画にあるカフェだ。古い土蔵を移築、改修して造られており、港を眺めながらランチやティータイムを楽しむ事ができる。こちらで頂いたランチが珠玉のものであった。
「お造り」
タイ、スズキ、イカなどの新鮮なお刺身。身が甘いのだ、あはァ美味い美味い美味い。
「マメアジの南蛮漬け」
このちょっとした小鉢ものから手が離せない。手を止められない、箸のスピードはいわ増すばかりだからほんの数秒で食べ尽くしてしまう。すみません、これ丼でいただけませんか。
「煮つけ」
魚(魚種をお訊ねするのを忘れた、大失態)を甘い薄味に煮つけた一品。と、記せば簡単だがこれぞプロの仕事!という品であった。甘いな、というのと薄味だな、という認識とのぎりぎり境界というか。身はほろりと崩れ、ネギ、豆腐、しいたけといった具材が出汁を吸い、すべての味わいが凝縮されつくしている。他の方がいなければご飯にかけて食べちゃうのに。
「焼きもの」
ノドグロに塩してシュッと焼き上げて。というだけのものだが涙がでるほど美味くてならない。こういうものかあるから海辺が羨ましくてならない。
「白魚のおどり食い」
三杯酢より少し薄めの、飲めるくらいに仕立てられたつゆに入れられた数匹の小魚。白魚と書いてシロウオと読む。シラウオと混同される事が多いが、シロウオはハゼ科に属し、シラウオはシラウオ科の魚。似ているがまったく違う魚種であるそうだ。写真で確認するとたしかにシロウオ(こちらでは『いざさ』と呼ぶこともあるらしい)はハゼっぽい顔つきをしている。そのまま飲んでよし、噛んでもよしというので、ひと噛みふた噛み。なに刺身と変わらない。骨に当たっているからかサクサクとした歯ごたえが小気味よいし、こんなに小さいから味などないだろう、と思っていたが、いやいやいやこんなに深い味わいだなんて。初体験、じつに美味しかったです。
「天ぷら」
揚げたての3種の天ぷら。これまた美味い美味い。シロウオと野菜かき揚げは意外なほど魚っぽい。こんなに小さいのに個性的なすごいヤツ。れんこんの天ぷらはほくほくして美味い、まぁもともと好きなのだけれど。
水鮎とは
鮎の稚魚のこと。鮎は川で生まれるが一度海に出て大きくなってから帰ってくる。水鮎は戻る前の河口付近で獲れたものだから、まだ藻を食べる前だから、鮎っぽいクセのない味わいだ。これまた新鮮じつによい。
この土蔵が
建築された正確な年代はわからないそうだ。小屋桁に「明治三十年」との記載があったそうだから、恐らくその辺ではないか、とカフェのマダムがおっしゃられていた。となれば1897年、築124年となるのか。足尾事件の請願運動が激化した時期だったり、京大が出来た年だったり。日清戦争が終わりロシアとの一戦が近づく微妙な時代に建てられたのか。
歴史好きにはそれだけでもドキドキしてしまうが、マダムの
「せっかく生きてここにあるのだから、活かしてあげないと」
との一言がとても印象的であった。マダムが子どもの頃から抱きしめてきたという、栗の一尺一寸大黒柱は、みているだけで幸せな心持ちとなれる存在であった。
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